2010年の5月23日の日曜日。この日、kobaは焦っていた。

その週の火曜・水曜はkobaの学校の中間テストが控えていたのであるからだ。

3年初めての定期テスト。このテストは当然、進路にもかかわる。「今回こそ、点数取ってやる!」とkobaは意気込んでいた。

そんなわけで、その日のkobaはチャー氏と一緒に、午前から図書館で勉強。午後も、中学時代にお世話になっていた塾でテスト勉強をしていた。

…そして勉強は3時30分ごろに終わり、どうしようかと思案しているうちに、kobaは携帯にある着信があったのを思い出した。

「今日、暇か?」

着信の相手は翁氏。実は、この電話は11時頃来てたが、その時は図書館で勉強してたため、返事を出すことができなかったのである。

「勉強も一段落したし、電話するかな。」と思い、電話。この時、完全に勉強するための集中力が切れていた。この日はよく勉強したと思う。

そして、「4時に遊びに行くから待ってろよ!」と告げ、kobaは帰り道が違うチャー氏と図書館で別れて単身、翁氏の家に向かった。

 

…それから20分近く歩いた4時頃、翁の家に到着。「麻雀をやるのかな?」と思っていたが、その予想は外れる。

「―――久々に将棋やんない?」

翁氏のベッドには「ハチワンダイバー」と言う将棋漫画が3冊置いてあった。これに影響されたのか分からないが、翁氏は対局を持ちかけた。

しかし、翁氏は将棋3級という腕前の持ち主。対してkobaは、レベル100あるうちのレベル10のコンピュータ将棋にガチでやって負ける。

勝負は見えていた。さすがに相手にならないだろ。

しかし、「相手にならないからやめようぜw」と言ったkobaに対し、翁氏がkobaに言った言葉は意外なものだった。

「…いや、もしかしたら負けるかもしれない。俺は“無敵囲い”で勝負する。」

――無敵囲い。翁氏いわく、「一部の初心者が何故か辿りつくという無敵の囲い」らしい。

無敵の囲いなのに、負けるかもしれない?無敵の境地はプロ・アマではなく、初心者がたどり着く?

矛盾だらけの名前、無敵囲い。しかし、kobaはその境地を見てみたくて、翁氏と対局することにしたのである。

 

 

 

…そして、kobaは対局を通じて、謎に包まれた戦法、“無敵囲い”の意味を知ることになるのである。

 

 

 

☆ルール確認☆

コイントスの結果、先攻:翁氏 後攻:koba

時間制限はなし。

原則として、対局は詰むまで行われる。 

 

 

解説:なぜ、振り駒ではなくコイントスなのかは突っ込まないでください。どうも、kobaです。

さて、先攻の翁氏。いきなり飛車を中央に移動させました。これは中飛車への布石…なのでしょうか?

 

解説:そして、後攻のkoba。将棋はおよそ、1カ月ぶり。勝負勘も鈍ってる気がします。

そんなkobaはいつもの戦法を使用。3筋を攻めにかかります。

 

解説:翁氏が用いる“無敵囲い”の布石となる手。

「無敵の囲い」というぐらいだから、ここから穴熊みたいな体勢に持ち込んでくるのでしょうか…?

 

解説:一方のkobaはいつも通り、飛車をスライド。

ここから本格的に3筋を狙いに行きます。

 

解説:ここで、「これで“無敵囲い”の完成だ。」という翁の驚愕のセリフ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…いや、ちょっと待て。これ王が逃げられない、ただの自爆手じゃ…。

 

解説:しかし、ここから本格的な5筋への攻めが入ると厄介。

そう考えたkobaは先に5筋の歩を動かします。これにより、歩と飛車の中央突破のごり押しを歩と角の利きで防ぐ狙いです。

 

解説:翁氏、進軍開始。やはり、最初に進めるのは5筋。

この戦法はやはり、中飛車の形になるのでしょうか?

 

解説:kobaも3筋に進軍開始。3筋を落とすか、5筋が落とされるか。

これにより、勝負が決すると睨むkoba。

 

解説:「やることがない。」と言って指した翁氏の次の一手は端の歩の前進。

さて、この歩の前進はのちにどう影響してくるのでしょうか。

 

解説:しかし、kobaもやることがないことには変わりはありません。そこで、王を避難させることに。

守備を怠るとそこから崩壊が進んでしまうので、気をつけて指していきます。

 

解説:なるほど、さっきの歩の前進は角道をあける選択肢からやったのですね。

幸い、翁氏の角の利きは今のところは脅威ではないが、さて次の一手をどうしたものか。

 

解説:kobaは角がどう来てもいいように左の銀を上げて、敵襲に備えます。

と、ここでkobaも戦法を変えることをここで思いつきます。いつもの飛車のごり押しではない、新しい戦法で戦うことを決めました。

 

解説:翁氏の角が移動。やることがなかったからの一手だったのか、それとも意味ある一手なのか。

ブラフの行動だとしても、翁氏は将棋3級の腕前。すべての行動に意味があるような気がして、この手もなんか怖く感じられます。

 

解説:kobaはつい怖くなって王を逃がしました(ぁ

でも、なんか本当に怖いんですよね。目の前に広がるのは、81マスの深海。そこに深く潜る「ハチワンオキナー」(誰)の虎視眈々と狙う目。

思わず、守備的になるのも無理からぬことかと思います。

 

解説:そして翁氏は角道をあけるだけのために使ったと思われる歩を再び前進させてきました。

考えられるパターンの一つとしては…歩と角と香車による抉(えぐ)り。

――もしかしたら、kobaはすでに「ハチワンオキナー」の手に堕ちている…?

kobaは去年の晦日にやった、倉刈氏との対局以来の底知れぬ恐怖を感じました。

ただ、おそらく翁氏本人は無邪気に将棋を指してるだけだと思う。

 

解説:しかし、こんな十数手で引くわけにはいきません。

負けじと、新しい攻撃スタイルを組み立て、反攻へと乗り出す。その布石としての銀の進撃です。

 

解説:そして、17手目。桂馬の進軍であるが、kobaとしては嫌な手でした。

桂馬と言うのはただでさえ、曲者な存在です。そんなのを角・歩と一緒に攻撃し、サイドを破壊されたらどうしようもありません。

ここでしばらくkobaはどうしようか悩みます。

 

 

解説:17手目から結構長考しましたが、結局よくわからなくなって適当に歩を進めちゃいました☆(おい)

まぁ…でも将棋の階級持ってる人の考えを、素人が見抜こうだなんて無理な話なのですよ。

 

解説:そして、この19手目がターニングポイント。まさかの銀と角の交換です。

終盤に差し掛かっている時の「あと、銀さえあれば勝てる!」という状況でもないはず。

さて、この普通ならば考えられない一手。翁氏の目にはどんな未来が見えているのでしょうか?

 

 

解説:当然のように、金で角を取ります。これで交換成立。

…しかし、kobaには攻める手段が見当たらない。

 

解説:続いて、翁氏のこの一手。

このとき、「自棄になったのか!?」と思いましたが、まだ序盤もいいところ。自棄になるような局面でもありません。

しかし翁氏のことだから、こういうよくわからない手でも、「この無償で渡す桂馬で後の3巡を買うっ…!」とか考えてそうです(ぇ

 

解説:kobaには捨て牌三種の声が聞こえませんでした^^(←凡夫)

というわけで、桂馬にほとんど何も考えず、突っ込みます。

 

解説:ここで翁氏、桂馬を代償にして得たスペースを銀打ちに使いました。

が…銀は今のところ、どこも攻撃できません。さて、ここからどうするのでしょうか?

解説:ここで、金を上げてきたkoba氏。

理由は、王の逃げ道を作るためです。何回もkobaは王が逃げられなくなって負けてますしねっ!

 

解説:ここで翁氏は9筋の歩を進めてきました。

銀を進ませるためなのか、それとも別の目的があるのか。それとも、単純にやることがないのか(何

 

解説:ここはおとなしく歩で取って様子を見ます。翁氏はこの後どう進めてくるのでしょうか。

 

解説:翁氏、香車で取ってきました。

そうすると、考えられるこの先の展開としては、同香→9五歩打ち→同香→同銀って感じでしょうか?

解説:まぁここは順当に香車で取ります。

さて、ここからの展開は、kobaが予想したとおりになるのだろうか?

 

解説:kobaの予想は、まさかの正解でした。

「結局歩を一個失って、銀を脱出させたか。」とこの時、kobaは考えていました。

 

 

 

しかし、この時kobaが考えているのとは別のシナリオを翁は思い描いていたのだった…(と思う。)

 

解説:純粋に香車で取るしかないkoba。

まぁ、いわゆる“俗手”を打った感じでしょう。

 

解説:さて、ここまでは予想した通りの手ですが、kobaはもう次の手を読むことが出来ません。

持ち駒的には圧倒的有利なので、戦力に物を言わせるような戦い方で行きたいところです。

 

解説:ここで、銀を上がらせました。

目的は二つ。一つは銀を攻撃に使うことで、もう一つは王の逃げ道を作ることです。

 

解説:ここで香車が打ち込まれました。

本来なら歩で防ぎたいところですが、それだと二歩になってしまうのが痛いところ。

 

解説:よってこの桂馬は無視。どうせ、王が対応してくれるでしょう。(投げやり)

 ここで、kobaはさらに銀を進ませ、攻撃に転じさせます。

 

解説:香車は桂馬を取って成り。

翁氏は、この桂馬で何を仕掛けてくるのでしょうか?

 

解説:まぁ、ここは順当に王で取りますよね。

自陣内にあんな危険因子いたら嫌ですし(笑)

 

解説:「実はこれ狙ってたんだよねー。」と言った翁は、3四桂打ち。

角か金を取れるおいしいところ…には間違いないんですが、翁氏、完全にkobaの飛車を見落としています。

 

解説:ここは迷うことなく飛車で取ります。

…それにしても翁氏がうっかりミスをするなんて、珍しい。

 

解説:結局、すべて持ち駒を失ってしまった翁氏は仕方なく、銀を動かすことに。

今、kobaが圧倒的有利な状況で進んでいます。

 

解説:とりあえず、王を元の位置に戻すことで逃げやすくしました。

逃走経路などもしっかり考えて打たないと、いかに有利と言えども簡単に翁氏につかまります。(経験者は語る)

 

解説:ここで翁氏が仕掛けてきました。歩の前進です。

しかし、これ一体どんな目的があるのでしょうか…?ただのやられ損な気も・・・。

 

解説:まぁ、ここは順当に歩で取ります。

ここから飛車で歩を取るとかそういう展開はないはずなので、狙いがさっぱり読めません。

 

解説:ここで翁氏は“無敵囲い”を崩してきました。

そして、まずは手始めとして、銀が出る形に。いよいよ翁氏の駒が始動し始めます。

 

解説:ここから歩を進めて、銀と対峙する形に。

同銀→5五香車打ち→同銀→同角としようとしていたのですが、よくよく考えたらこの手は完全に無駄な手だったorz

やっぱり、悪いところって後になって気付くものですねぇ…。

 

解説:ここで翁氏は意外にも歩をかわす形に。

この銀の移動が絶妙な手なんですよね。守備と攻撃の役目を同時に果たす銀はkobaにとってかなり厄介な存在です。

 

 

 

……さて、45手終わったのでいったん切り上げます☆ そして次回予告!

 

 

 

 

<次回予告>

kobaに対して、翁氏が不慣れな戦法“無敵囲い”で挑んだが、予想外の苦戦を強いられた展開となった前半戦。

一方のkobaは思わぬ持ち駒の多さに嬉々としながら、「もしかしたら、この勝負いける…!?」と思うようになる。

しかし、翁氏は将棋を何年も前からやっていた人物。

不慣れな戦法というハンデをものともしない戦いを見せ、勝負は均衡していく。

果たして、kobaの“翁氏越え”の幻想は叶うのだろうか。

 

 

→後半戦へ続く。

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